題名未定

最終更新
2007年01月26日

陳宮

ちんきゅう Chen Gong ???〜198

後漢の臣。字は公台【こうだい】。東郡の生まれ。早い時期から曹操【そうそう】の臣として力を尽くし、劉岱【りゅうたい】が黄巾賊に殺されると「この地を拠点とするべきです」と進言。さらに兗州【えんしゅう】各地の別駕【べつが】や治中【じちゅう】らを説得して周り、彼らを曹操に協力するように仕向けた。そのおかげで曹操は兗州に確固たる基盤を作ることが出来たといえる。

曹操の片腕として精力的に働いていた陳宮であったが、曹操が二度目の徐州征伐を起こすと突如反旗を翻した。曹操の大親友であった張邈の弟張超や従事中郎の許汜、あるいは王楷を誘い込んでの大反乱である。さらには当時放浪の身であった危険人物呂布を招き入れ、兗州の牧とした。各地の郡県も一斉に呼応して陳宮についたので曹操はひどく驚いたであろう。

それから陳宮は呂布の謀臣として何度も曹操を追い詰める。一度は窮地に追い込んだものの、最後は曹操・劉備連合軍の前に敗北。陳宮の立てた策を呂布が受けていれば結果は変わったとも言われるが、呂布は良策と見られる策を次々と跳ね除けた。もともと呂布は曹操に降伏したいと思っていたし、呂布の妻が陳宮を恐れてたびたび呂布を止めるなどしたので歯車がかみ合わなかったのである。

下邳防衛戦では、呂布を見限った味方に手土産としてぐるぐる巻きにされて連行される。道中呂布が城門で降伏の叫び声を上げたのを聞いて「曹操を明主と呼ぶとは何事か、ばか者め」と叫んだ。

敗戦処理になると曹操は(陳宮を殺したくなかったのだろう)陳宮に親しみをかけて語りかけた。「陳宮よ、今日は何をしに来たのかね」と。陳宮は答えた。「決まっている。死にに来たのだ。」と。

曹操は言う。「あなたはそれで良いかもしれないが、年を召された母親はどうするのだね」。陳宮は答える。「孝でもって世界を治める者は他人の親を傷つけはせぬ。お前次第だ。」曹操は言う。「あなたの奥方はどうだ?」。陳宮は答える。「天下に仁を敷く者は他人の血統を絶やさぬ。これもお前次第だ。」曹操はさらに何か言おうとした(なんとかして陳宮を許そうとした)が、陳宮はそれをさえぎり、「軍法を明らかにせよ」と、自ら死刑台に上がって首を刎ねさせた。

陳宮を送る曹操の目に光るものがあったかは分からない。

考察

陳宮が裏切ったのは荀彧などの文官勢と反りが合わなかったからだとする説もあることにはありますが、後の陳宮の執拗なまでの対曹操戦略を見ると、陳宮が何らかの理由で曹操を倒そうとしていたのだと察することができます。単に「嫌になった出て行った」というだけでは説明がつかないんですよね。出て行くだけならもっと遠くに行けばいいわけです。これだけはパンチが足りない。

彼が曹操を裏切った理由は、史書からははっきりしません。一時の野心かとも見えるかもしれませんが、曹操と呂布では天下人に相応しいのは前者であることは陳宮も分かっているはず。となると「呂布を選んだ」のではなく「曹操を見限った」とみるのが、より真実に近いのではないでしょうか。

曹操を見限った出来事として有力なのが、第一次陶謙【とうけん】征討戦において曹操が行った屠城【とじょう】です。一般に徐州大虐殺と呼ばれるものですね。演義によれば陶謙の部下が金に目をくらんで曹操の父親を殺して金品を奪う大事件が起きるわけですが(そこで正義の味方である劉備様が登場するわけですが)、史実では陶謙自らが曹操の父親を殺しています。何か嫌なことでもあったのでしょうか。ともあれ当然曹操は激怒します。

そこで、怒った曹操は見せしめのためか報復のためか(陶謙とは直接関係無いはずの)徐州城下の領民達を、猫の子一匹残らず殺してしまいます。陳宮もその現場に居合わせ、この世のものではない惨事を目の当たりにしてしまったのでしょう。陳宮の中に言いようの無い衝撃が走ったことは想像に難くありません。あぁ、自分は悪魔を補佐していたのかと。

この後曹操は一時陶謙包囲陣を解いて軍を引きます。この時陳宮も一緒に戻ることになるわけですが、彼の心中はいかほどだったでしょうか。

のち曹操が再び陶謙討伐のために軍を動かした時に、陳宮は同行しませんでした。仮病だったのかどうかはわかりません。そして曹操が本国を空けたその隙に、張超や呂布らを一気に引き入れ、大反乱を起こしたのです。そして異様なまでの執着心で曹操を追い詰め、すんでのところで殺せるところまで追い詰めたあと、逃げられます。曹操の悪魔のごとき強運は陳宮の及ぶところではありませんでした。

陳宮は曹操に逆転され、縄目を受け、そして自ら死を選びます。陳宮は言います。(たとえ悪魔であったとしても)主と認めた男を裏切った自分は死ぬべきである、と。

悲運の軍師とは、まさに陳宮のためにあるような言葉といえないでしょうか。

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